社会課題を捉え、日本中の「はたらく」をアップデートする想いを事業化していくために、パーソルグループが運営する新規事業起案プログラム「Drit(ドリット)」。

いつかは自分で新規事業を立ち上げたいと思っている方は少なくありませんが、実際にチャンスが訪れる方はその一部で、そこからさらに成果を出せる人はごくわずか。新規事業のアイディアを考えるとの同じくらい、チャンスを引き寄せる力も重要なのです。

今回はディップ株式会社で多くの新規事業を立ち上げ、「いちばんやさしいDXの教本」を上梓した亀田重幸氏に、新規事業を成功させるコツを聞きました。社内でチャンスを引き寄せるポイントや、事業の成功率を上げるためにしてきたことをお届けします。

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亀田 重幸
ディップ株式会社
商品開発本部 次世代事業統括部 dip Robotics 室長

プログラマーやインフラエンジニア職を経て、アルバイト・パート求人掲載サービス「バイトル」のスマートフォンアプリの企画立案を担当。エンジニアとディレクターという両側面のスキルを生かし、数多くの新規事業立案を手掛ける。AIのニュースメディア「AINOW」立ち上げを経て、現在は社内RPAや社内営業DXの推進責任者に従事している。

 


新規事業のスタート地点に立つための「信頼貯金」

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――まずはこれまでのキャリアについて教えて下さい。

私はエンジニアとしてディップに新卒入社しました。もともと自分で事業を立ち上げたいという思いがあったので、2年間はインフラエンジニアとしてWebサービスの土台を学び、3年目から事業企画に取り掛かりました。

それからはビジネスオーナー兼ディレクターとしてサービスづくりを学びました。5年で100枚以上の企画書を書き、その中には失敗したことも多くあります。
そのまま自分で事業を作り続けるのもよかったのですが、自分が学んできたノウハウを社内に共有した方が会社に有益だと思い、AI/RPA開発責任者として社内業務の改革推進を行っています。

――まずはこれまでのキャリアについて教えて下さい。

転職という選択肢もありましたが、社内にはゼロイチで事業の立ち上げを学ぶ環境もあったので、それを学んでからでも遅くないと思いました。何より、それまで蓄えた信用貯金があったので、転職するよりも社内の方が新規事業を始めやすいと思ったのです。

――信用貯金があると、どんな風に新規事業の役に立つのでしょう。

例えば新規事業を始める時にイニシャルコストで1,000万円が必要だとした場合、信用貯金があれば「こいつにだったら出してもいいか」と思ってもらえます。信用貯金がなければ、それだけでスタート地点にすら立てません。
最初の頃は事業を立ち上げても失敗し、信用貯金も失いゼロになります。しかし、チャレンジしたことは評価されますし、もし信用貯金がなければゼロどころかマイナスになっていたと思います。

――再びチャレンジするにはどうすればいいのでしょう。

ゼロになった信用貯金を再び貯めるしかありません。私も1億円くらい使った新規事業で、4年やっても利益を出せないことがありました。その損失を埋めるためにも、会社のためになることをしようと思って社内のDXにとりかかったのです。

――信頼貯金は何をすれば貯められるのか伺ってもいいですか?

わかりやすいのは社内の表彰などで、しっかり評価されることですね。自分がやりたいことではなくても、まずは会社から与えられたミッションで成果を出すことです。
あとは、他にも困っている人がいたら助けましょう。「あいつに相談したら助けてもらえる」と思ってもらえるくらい、信頼してもらえると理想的ですね。

DXする業務を自分でできるほど「コスプレ」してみる

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――社内で推進したDXの内容について教えて下さい。

顧客を管理し営業の業務改善をする「レコリン」というCRMを開発しました。6ヶ月で利用率99%を達成し、今では1,000人もの営業が活用してくれています。

――CRMは導入してもなかなか利用されないケースが多いと思うのですが、なぜそれほど利用されているのでしょうか。

「新しいサービスを作る」ではなく、「困りごとを解決する」という観点で作ったからだと思います。営業の困りごとを探すために、私自身も営業をしてみました。
私は「コスプレDX」と呼んでいるのですが、DXを推進するには何よりまずDXする業務を深く理解しないといけません。コスプレをするように、DXをする対象の職種になりきるのです。

業務を理解するためにインタビューをする人は多いですが、自分でその仕事ができるほど理解しようとする人は多くありません。DXを目指す業務を実際にする人たちと同じ目線で作られたサービスは、必ず誰か一人には刺さるでしょう。
これができれば、儲かるかどうかは別にして、使ってもらえるサービスにはなるはずです。サービスを作っても使ってもらえない人は、業務の理解が浅いのが原因かもしれませんね。

――亀田さんは実際に営業してみてどうでしたか?

現場で一緒に営業をしてよかったことは2つあります。一つは営業のメンバーに信頼してもらえたことです。営業のツールが浸透しない理由の一つは、ツールが信頼されていないからです。上司が突然「今度からこのツールに商談内容をメモして」と言っても、メンバーたちは信用してないので乗り気になりません。
現場で一緒に
はたらくことで、顔を覚えてもらえますし仲間として認めてもらえます。それは同時に私が作るサービスへの信頼にもなるのです。

――もう一つのよかったことはなんでしょう。

営業が本当に困っていることが理解できたことです。実際に営業をしたことで、「営業リスト作り」が負担も大きく、非効率であることが分かりました。
そこで、効率的にリストを作るための管理ツールを開発して、同期の営業に使ってもらったのです。それにより彼は営業効率が上がり、それを見ていた他の営業たちも「自分も使いたい」と言い始めました。

――最初は営業リストの作成と管理ツールだったのですね。

そうです。そこから商談メモを残せる機能も作りました。営業の方たちが商談メモをとっていたのは知っていましたし、それをデジタルで残したいというニーズがあったのも知っていました。
しかし、上司に「ツールに商談メモを残せ」と言われてもベネフィットを感じなければ人は動きません。リスト管理のツールでベネフィットを感じてもらえたからこそ、商談メモも残してもらえるようになったんだと思います。

――ベネフィットのあるサービスを作るだけでも利用率は99%になるものでしょうか。

便利なサービスを作る以外にも、営業部長への提案も行っていました。メンバーにはツールを使ってもらって使いやすさを実感してもらい、そのデータを持って営業部長に実績を提示したのです。
営業組織の下と上からサンドイッチで浸透させることで、99%もの利用率を達成できたのだと思います。

自社ビジネスの理解なしにDXの成功はない

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――社内にない業務をDXするにはどうすればいいでしょうか。

社内にない業務でも、できる限り実際に体験するのが一番ですね。例えば私は不動産仲介向けのDXサービスを作った時は、実際に不動産の仕事を教えてもらいました。
不動産屋に客として訪れ、仲良くなってから事情を話して、どんな業務をしているのか教えてもらったのです。実際に資料なども使って物件のプレゼンなども見てもらい、評価もしてもらいました。
完璧とは言えなかったものの、60%ほどのプレゼンはできるようになったので、不動産の仲介業務を深く理解できましたね。
お客さんとして関わりをもったことで接点を作りやすくなりましが、逆にいえば自分と接点がない領域のDXはおすすめしません。

――どの会社に属しているかでDXできる領域は変わってきそうですね。

そうですね。私も様々な事業を考えましたが、自分ではDXが難しい領域というものが多々ありました。人材系の会社にいながら音楽業界のDXをしようと思ってもうまくいかないでしょう。
自分にとってどの領域なら接点が作れるか考えることが成功の近道になると思います。

――ではDXで新規事業を考える時はまずは何をしたらいいでしょう。

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自社のビジネスモデルを知ることです。誰にどんな価値を提供し、どのように売上を上げているのか図にまとめるのがおすすめです。できればチームみんなでディスカッションしながら書くとなおいいですね。
多くの人は自分の業務は理解していますが、全体のビジネスモデルまで理解していませんし、自社にどんなリソースがあるのかも分かっていません。決算書などを見ると、会社について多くの気付きがあると思います。

――チームでやることにも意味があるのでしょうか。

ゼロから新規事業を作るなら、一人で考えた方がいいです。一人のほうが考えがぶれないので。しかし、既存の事業をDXする場合には、様々な職種の人の意見があったほうがいいですね。自分では気づかなかった多様な意見も多く出るでしょう。

 



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今回のINNOVATOR'Sトークでは『いちばんやさしいDXの教本』著者亀田さんから学ぶ HR領域『DX×新規事業』のつくり方」と題し、株式会社ディップでdip Robotics 室長を務める亀田重幸氏に登壇いただき、DX×新規事業の着眼点に迫ります。

■イベント詳細:https://www.drit-i.jp/news/event_20210311